鼡径(鼠径)ヘルニアは、よくある病気(小児の5%、成人の0.5%)だが、一般にはよく知られていない。ゆえに治療法の不合理な点も知られていない。
著者は成人外科と小児外科の手術経験から、ヘルニアの治療法――患者がこどもか成人かで手術法が違う、何故なら、こどものヘルニアは先天性で成人のヘルニアは後天性――に疑問を抱く。
こども用の手術の再発は0%に近く、成人用の手術は時間が掛かるうえ数%以上再発する。
本書は膨大な文献に当たりながら、ヘルニア原因説とヘルニア解剖の歴史を丹念に追求して考察を加え、通説に挑んで疑問を解明した意欲的な書である。
<目 次>
はじめに
第1章 鼡径ヘルニアという病気
第2章 古代の鼡径解剖とヘルニア原因説
第3章 鼡径解剖の発展
第4章 近代のヘルニア手術と「腹壁脆弱説」
第5章 先天性ヘルニアと「鞘状突起説」
第6章 クーパーの鼡径解剖
第7章 ヘルニア手術の発展
第8章 現代のヘルニア原因説
第9章 「鞘状突起説」の再評価
おわりに/注と文献
付録1: Cooper AP :The Anatomy and Surgical Treatment of Inguinal and Congenital Hernia
2:Cooper AP :The Anatomy and Surgical Treatment of Crural and Umbilical Hernia, etc
3:Cooper AP :The Anatomy and Surgical Treatment of Abdominal Hernia ―――――より
事項索引/人名索引
<著者略歴>
川満富裕(かわみつ・とみひろ)
1948年 沖縄県に生まれる
1975年 東京医科歯科大学を卒業後、一般外科を経て、小児外科を専攻
1984年 獨協医科大学越谷病院小児外科講師
1998年より終末期医療に従事
2013年 青葉病院院長