ノロウイルスによる集団感染が現在も各地で続いています。
浜松の小学校での集団感染には、パン工場で働く健康保菌(ウイルス?)者が
感染元になったそうで、本人に自覚がない不顕性感染は知らないうちに感染を
拡大させ、予防の難しいところです。
不顕性感染で、多くの食中毒の被害者を出したことで医学史に有名なのが、
チフスのメアリ Thyphoid Mary こと、メアリ・マロン(1869-1938)によるチフス菌
バラ撒き事件です。
優秀なコックだったメアリは、ニューヨーク州の上流家庭の住込みコックとして、
7年間で8軒に雇われ、家族においしい料理を提供しながらチフスに罹患させました。
本人に自覚症状はなく、むろんチフス菌保菌者であることも知らずに……。
公式には、53例の感染と3例の死亡に関与したとなっていますが、1903年の
ニューヨーク州イサカの大流行(1400例の被害)はメアリが原因と言われています。
治療法のなかった当時、チフス菌が繁殖していた胆嚢の切除も、料理をしない
という条件も拒否した彼女は、リヴァ―サイド伝染病院へ合計26年間収容されました。
現在では、腸チフスは抗生剤による治療が有効ですが、ノロウイルスの胃腸炎には
治療法がありません。
R.ゴードン著 倉俣・小林訳 『世界病気博物誌』『歴史は患者でつくられる』
(時空出版 いずれも品切れ)より
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