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天然記念物―ぼくが ここに

白馬岳に登山した時のことです。夏とはいえ大雪渓を登りきるのに何時間も要して、
ようやく山頂に向けての急峻な土の斜面(葱平・ねぶかっぴら)に辿り着くと、
両親と小学生の女の子、男の子とおじいちゃんの一家が水辺で休憩していて、
その後、抜きつ抜かれつ登って行きました。広い高山植物が群生する場所に来て、
天然記念物ライチョウの保護を訴える看板の下で休んでいると、先ほどの子どもが
2人だけでやってきて、男の子が「ライチョウって植物ですか?」と聞いてきました。
「鳥よ」と答えると、お姉ちゃんが「○○君も天然記念物だよ、この世に1人しかいないもの」
弟が「そうか、僕は天然記念物なんだ。僕は1人しかいないから」と嬉しそうに笑いました。
訊くと、おじいちゃんが早く歩けないから、先に来てしまったそうです。

 

まどみちおさんが亡くなられました。作者は知らなくても、よく知っている童謡、詩や
童話が多いことに今さらながら驚かされました。

  

   ぼくが ここに いるとき/ほかの どんなものも/

   ぼくに かさなって/ここに いることは できない…
   ああ このちきゅうの うえでは/こんなに だいじに/

   まもられているのだ/どんなものが どんなところに/

   いるときにも/その「いること」こそが/
   なににも まして/すばらしいこと として

 

「ぼくが ここに」で想い起こした、ある夏の一こまです。