マダニを介する感染症が増え続けています。
マダニが媒介する病気は多く、病原体であるウイルスは多種多様です。
現在、日本で問題となっているマダニによる感染症は、重症熱性血小板減少症候群=SFTS
(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)と日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)です。
SFTSは2012年に初めて診断されて以来、関西以西の近畿、中国、四国、九州で見られ、今年に
入ってからの患者数は92人、死亡3人(10月20日現在)、2013年に統計を取り始めてから最多
となりました。今のところ関東以北における感染例はありません。病原体はSFTSウイルスです。
治療法はなく対症療法が中心となります。
日本紅斑熱はリケッチアというウイルスを保有するマダニに刺され感染する病気(リケッチア
症)の1つで、今年に入って静岡、京都などでの発生があり死者も出ています。
世界各国に異なる種類のリケッチア症が存在します――ロッキー山脈紅斑熱(北米)、地中海
紅斑熱(アフリカ、地中海沿岸、中東、インド)、発疹熱(世界各地)など。
ツツガムシ(ダニ目ツツガムシ科)が媒介するツツガムシ病も、リケッチアウイルスによるも
のです。日本全国に発生がみられます。自然回復例もあれば、短時間で重症化しすぐに治療し
ないと死に至ることもあります。治療薬としては、ペニシリン系やセフェム系は効果がなく、
テトラサイクリンなどの抗菌薬が使用されます。
いずれも予防のためのワクチンはなく、農作業、登山、キャンプ、犬の散歩などを行う時には
肌の露出を避け、防虫剤を使用するなどの予防が肝心です。
日本紅斑熱は患者から感染することはありませんが、SFTSは体液や血液からの感染もあります。
ヨーロッパでも現在、マダニによるダニ媒介性脳炎が急増しているようです。この病原体は、
ロシア春夏脳炎ウイルス、中部ヨーロッパ脳炎ウイルスです。中高年者は脳炎を起こし重症化
し死亡する場合があります。日本でも北海道で発生し死亡例もありました。海外ではワクチン
接種が行われています(日本では未承認で少数の医療機関が海外で承認されたワクチンを個人
輸入して接種)。渡欧予定のある方は事前の情報を得てご対応ください。
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