<改訂新版>
狂犬病は発病すると治療法のない死の病で、知識の有無が生死を分ける!
日本を含む数ヵ国を除き、世界の大部分の地域で今も発生し、欧米でも年間に数例の発生例があり、世界中で毎年55,000人もの人々が犠牲になっている。
感染経路、診断、咬まれる前と後の発病予防、わが国での根絶への歴史と各国の状況、対策等を、多くの症例を中心にわかりやすく詳述。
狂犬病発生国への渡航機会も増え、さらに狂犬病感染動物の国内への持込みによって国内での発生する危険性も懸念される。
医療・獣医関係者、公衆衛生・行政関係者のみならず、海外渡航者、愛犬家にも正しい知識は不可欠である。
<目 次>
第1章 狂犬病の流行状況と疫学的特徴
1 狂犬病はいつ頃からあったのか
2 狂犬病の流行はどのように広がったか
3 日本での狂犬病流行はどのようであったか
4 現在,狂犬病の発生はどの地域にみられるか
第2章 狂犬病の病原体はどのようなものか
1 狂犬病の病因はどのようにしてわかったか
2 狂犬病ウイルスはどのようなものか
3 狂犬病ウイルスはどのような経路で感染するか
(1)咬傷による感染
(2)死体からの感染
(3)経気道感染
(4)実験室内感染
(5)経口感染
(6)移植による感染
(7)母子感染
第3章 ヒトの狂犬病
1 ヒトの狂犬病はどのような経過をたどるのか
2 ヒトの狂犬病の生前診断に利用される検査法はどのようなものか
(1)生前診断はなぜ必要か
(2)生前診断のための検査法
3 ヒトの狂犬病の治療法はあるのか
4 咬まれたあとの発病予防法(曝露後発病予防)
(1)狂犬病ワクチンはどのように開発されたか
(2)パストゥールの狂犬病ワクチンの問題点
5 狂犬病ワクチンはどのように改良されたか
(1)旧世代の狂犬病ワクチンによる副反応
(2)狂犬病ワクチンに混入する不純物を減らす努力
(3)組織培養不活化狂犬病ワクチンの誕生
6 狂犬病ワクチン接種による抗体産生はどのようであるのか
(1)ワクチンの種類による差
(2)接種経路による差
(3)年齢による差
7 現在,咬まれたあとの狂犬病発病予防はどうしているか
(1)狂犬病曝露後発病予防法
(2)曝露後発病予防の効率と予防効果
(3)組織培養ワクチンを用いた狂犬病曝露後発病予防の問題点
(4)狂犬病曝露後発病予防の失敗例
(5)WHO曝露後発病予防方式を改良すべき点
8 咬まれる前の狂犬病予防法はあるのか
(1)曝露前免疫のための狂犬病ワクチン接種方式
(2)曝露前免疫を受けるべき人々
(3)曝露前免疫の効率
(4)曝露前免疫と狂犬病の予後
第4章 動物の狂犬病
1 狂犬病にはどのような動物がかかるのか
2 イヌの狂犬病はどのようであるのか
(1)イヌの狂犬病の症状と経過
(2)イヌの狂犬病の疫学的特徴
3 ネコの狂犬病はどのようであるのか
(1)ネコの狂犬病の特色
(2)ネコの狂犬病の症状
(3)ネコの狂犬病の疫学的特徴
4 ヒトを咬んだイヌやネコにはどのように対処するのか
(1)狂犬病常在地の場合
(2)脳組織の検査法
(3)日本の場合
5 野生動物の狂犬病
(1)キツネの狂犬病
(2)アライグマの狂犬病
(3)コウモリの狂犬病
第5章 狂犬病の流行阻止と根絶
1 日本ではどのようにして狂犬病を根絶したか
(1)明治以降の狂犬病発生状況
(2)第2次世界大戦後の流行と狂犬病の撲滅
2 アジア諸国での狂犬病をめぐる状況はどうか
(1)韓国
(2)インドネシア
(3)インド
(4)バングラデシュ
(5)ネパール
(6)タイ
(7)中国
(8)台湾
(9)日本人が注意しなければならない点
3 都市型狂犬病流行への対策
(1)イヌ集団ワクチン接種の最初の試み
(2)海外における動物用狂犬病ワクチン開発と改良
(3)日本におけるイヌ用狂犬病ワクチンの使用と問題点
(4)日本におけるイヌ用狂犬病ワクチンの改良
(5)日本製人体用狂犬病ワクチンと動物用狂犬病ワクチンの相違
4 森林型狂犬病対策
第6章 日本で必要な狂犬病対策は何か
1 ワクチン外来での狂犬病曝露後発病予防の動向
(1)受診者数の推移
(2)年齢分布および男女比
(3)海外で受傷した人での加害動物の種類
(4)咬傷などを受けた地域
(5)咬傷などを受けた状況
(6)受傷部位
(7)受傷後に現地医療機関を受診した被害者の割合
(8)受傷後に現地医療機関で受けた処置
(9)海外で接種を受けた狂犬病ワクチンの種類
(10)狂犬病ワクチンの副反応
(11)狂犬病曝露後発病予防の結末
(12)まとめ
2 日本で再び狂犬病が発生する可能性はあるか
3 日本ではヒトの輸入狂犬病が3例しかないのか
4 狂犬病が再び侵入する可能性はどうか
5 今後の狂犬病発生予防に必要な対策
(1)狂犬病をめぐる日本の状況
(2)ヒトの輸入狂犬病対策
(3)動物の輸入狂犬病
(4)輸入狂犬病からの2次感染,狂犬病再流行への対策
6 将来の狂犬病予防策
【症例】
・イヌ咬傷による狂犬病症例
・コウモリ咬傷による狂犬病症例
・動物の死体からの感染症例
・角膜移植による感染例,米国
・角膜移植による感染例,フランス
・角膜移植による感染例,タイ
・角膜移植による感染例,インド
・角膜移植による感染例,イラン
・異常に長い潜伏期の狂犬病症例,米国
・海外でイヌ咬傷を受け,帰国後多彩な症状を訴えた日本人例
・狂犬病からの回復例-1
・狂犬病からの回復例-2
・インターフェロン投与例
・センプル型ワクチンによる副反応を生じた症例
・狂犬病ワクチン注射を臀部に受けて発病した男性
・ザグレブ方式で発病予防を受けて発病した小児
・咬傷部位を縫合して発病した小児
・WHOの勧告通りの発病予防を受けたが発病した小児-1
・WHOの勧告通りの発病予防を受けたが発病した小児-2
・WHO方式を改良して発病予防できた症例
・狂犬病抗体陰性例
・狂犬病抗体陽性例
・曝露前免疫失敗例
・加害イヌがネグリ小体陰性であった狂犬病死亡例
・生前に診断確定できなかった狂犬病症例,米国
・死後2ヵ月を経て狂犬病と診断された症例,米国
・外国人医療職員によって診断された狂犬病症例,米国
<著者略歴>
髙山 直秀(たかやま・なおひで)
1944年東京都生まれ
1968年千葉大学医学部卒業
1972年干葉大学大学院医学研究科修了
国立干葉病院小児科,東京大学医学部附属病院分院小児科を経て,
1977年東京都立駒込病院小児科勤務。
1978年同病院のワクチン外来担当
1983年同病院小児科医長
2003年同病院小児科部長
2009年同病院定年退職,
その後も非常勤医師として同病院のワクチン外来担当
2014年同病院非常勤医師退職